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定員オーバー
職場に、物凄く図々しい先輩がいる。
例えば用事で外出する時、出かけるならついでにこれを買ってきてくれ、みたいな頼みごとをしてくるのだが、その品はわざわざ専門店に行かないと買えない品で、出かけるとはいってもその店には行かないと説明するのに、出たついでだからとゴリ押しする。
あるいは、会社で食べ物を頂いて、社員でそれを分ける時、当然のように自分の分を大きく切り分ける、あるいは大きく分けられた品を自分の物にする…こんな具合だ。
その日も、エレベーターホールで下りのエレベーター待ちをしていると、そこに先輩が現れた。
俺が待っている、一番早く到着しそうなエレベーターの前に当たり前のように立ち、扉が開くのを待つ。
それ自体はいつものことだから、もう気にはしなかったが、開いた扉の中はいつもと少し事情が違った。
ぎっしりと人が乗っていて、人数的にもスペース的にも、乗れるのは後一人か二人だろう。
当然のように先輩が先に乗り込む。それに俺が続くと、エレベーターに乗り込んだ瞬間、定員オーバーのブザーが鳴った。
反射的に外に出ると、まったく悪びれないどころか、むしろ俺が乗れなかったことに嬉しそうな顔を見せながら、先輩が『悪いな』と言った。
返事をする気もない俺の目の前でエレベーターの扉が閉まる。
下降のランプがゆっくりと下の階へ移っていくのを忌々しく見つめながら、俺は次のエレベーターの到着を待った。
程なく次のエレベータはやって来て、俺はそれに乗り込んだ。
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