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乗る者が少ないせいか、他のフロアに止まることなくエレベーターは一階を目指す。
到着、ふと先輩の載ったエレベーターを窺った。
無理矢理先に乗ったのに、自分の方が後から着いたと知った時、あの人はどんな顔をするのか。それを見てやろうと、エレベーターを待ったが、ふと、とあることに気がついた。
隣のエレベーターのランプが灯っていないのだ。
ボタンを押してもその一基だけ反応がない。どこかで停止しているのではなく、最初から動いていないかのようだ。
待てど暮らせどエレベーターは下りてこず、オフィスビルの受付にそれを報告すると、何やら電話でどこかに確認を取った後、そのエレベーターは本日工事中で動いていないと告げられた。その直後には、その基の前に利用できない旨が書かれた小さな案内板まで立てられたのだ。
結局の俺の意見は、他のエレベーターを見間違えたものとして聞き流されたが、翌日以降、先輩が社に姿を現すことはなかった。
あの定員すれすれのエレベーターは、いったいとどこへ行ったのだろう。あれに乗っていた人達は何者だったのだろう。
色々と疑問が残るけれど、俺の訴えは完全になかったものとして扱われているし、そもそも、先輩がいなくなっても、誰も心配しないし、抜けた分の仕事もすぐに穴を埋め合って回っている。
だから…もうこれ以上あのエレベーターの話を蒸し返すことはないだろう。
定員オーバー…完
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