52人が本棚に入れています
本棚に追加
「北東じゃ。鬼が来るっちゅう場所にあん人は埋められたんじゃ」
そう言って北東の方角を指すと、赤い異形の鬼はつむじのような勢いで駆け出した。その勢いに吹き飛ばされた少年は地面に転がってしまう。あわてて顔を上げた時には、もう鬼の姿はなかった。
少年はしばし唖然と、陽光にゆらゆらと揺らぐ草むらを見つめていた。
鬼……?
赤い影など、もうどこにもない。
いや。あれは。
少年の胸が苦しくなる。
あれは、人じゃ。
自分たちと紛う方なし、人じゃ。
*****
最初のコメントを投稿しよう!