旅にでよう

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コーヒーの香り、いつもの光景。 いつものカップにいつものブレンド。 ただ、カップの数が違うだけ。 昨日までは、2つのカップを用意した。 用意するのは、いつもわたし。 カップを2つ、テーブルに置き、 豆、水、フィルター、セットして、 コーヒーメーカーのスイッチを入れた。 ミキサーのうるさい音、それとともに香ばしい香り、 それが終わって、お湯の出る音。あたたかな湯気。 わたしは、新聞を玄関のドアに取りに行き、 それを彼の席の前に置く。 彼が起きてきて、いつもの言葉は、 「ウワァ いい香りだ」 そんな声を、日ごろの安心にして、 もう3年がたっていた。 それも、昨日までのこと、 今日は、一人で一人前のコーヒーを淹れる。 彼とは、大学からの付き合いだった。 地方生まれの彼は、上京してきてすぐ、 この辺りに住んだらしい。 1浪して、入学。だから、わたしの1つ上。 初めての出会いは、2年の秋。 大学内の図書館で、 彼がバイトをしていたときに、 わたしが「ポー」借りたときだ。 付き合ったきっかけは、彼のやさしさ見たと思ったから。 捨て猫拾って、アパートで飼おうと、 出来もしないのに、抱いて帰る、 そんな彼を見たからだった。 それも、もう過去のできごと、 夏の初めに終わったもの。 今朝はこれでも調子がいい、 だから、ひとりで買い物にいこう。 新宿まで、電車で行って、 てごろな今を探しに行こう。
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