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(ようやく今日、あのかたのお姿を拝見できる!)
別名『水晶の宮』とも呼ばれる、曇りなき玻璃でつくられた天界の宮城で。
龍界の華麗なる第二王子・旺諒(おうりょう)は、まるで初恋にときめく少年のように、心を躍らせていた。
玉皇大帝(ぎょくこうたいてい)の六百年ぶりの『還暦』を寿(ことほ)ぐために、ここ『宴(うたげ)の間』につどった各界の使者たち。彼らの色とりどりの衣装が、この日はきらめく宮城を、ひときわ華やかに彩っている。
天宮では皆、本来の姿ではなく人形(ひとがた)をとるのが慣例だ。白龍である旺諒もまた、長身の青年姿で彼らと親交を深めていた。
少しくせのある黒髪に、白皙の整った容貌。純白に金糸の龍紋をほどこした美々しい袍が似合う旺諒は、彼自身がまるで天宮の装飾のようでもあったが、当人は周囲からの熱い視線など、まるで案山子(かかし)のラブコールぐらいにしか感じてはいないらしい。
今の彼にとって最大の関心は、同じ龍でありながら天界に住み、俗世からは隔絶された憧れの佳人を、ひと目見ることなのだから。
紅水晶や翡翠などでできた眩い宝玉の花々。月光を織りこんだ領布(ひれ)をひるがえす舞姫たち。虹と甘露の美しいデザート。
感覚をこのうえなく楽しませてくれる天界のもてなしに、すべての賓客たちが夢心地となっている最中。
旺諒はそれらに目もくれないまま、緞帳(どんちょう)で閉ざされた部屋の一角に向って、ひたすら期待のまなざしを注いでいた。
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