天界の宴

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「みなの者。妾(わらわ)のために遠路はるばるご苦労であった。宴は一月ほどつづくゆえ、ぞんぶんに楽しんでゆくがよい」 玉皇大帝が、彼女の『?度目の還暦祝い』につどった使者たちを労うために、玉座の周囲を覆う天の川のように輝く緞帳をあけさせて、その龍顔をあらわにした。 玉皇は一見、二十代後半ぐらいにしか見えない、真紅の薔薇(そうび)を連想させる麗人だ。 天絹と呼ばれる輝く絹で織られ、瑞獣(ずいじゅう)の刺繍が散りばめられた紫の袍に、真珠をあしらった鈿子(でんす)。 それらに負けぬみごとな黒髪を結い上げた、艶(あで)やかな彼女が姿をあらわすと、たちまち宴の間が華やぎを増す。 だが今回にかぎっては、旺諒もふくめた使者たちのお目あては他にあった。 緞帳がさらに大きくひらかれると、彼らの視線がいっせいに、玉皇大帝の横にひかえている、銀色の傾城に釘づけになる。 玉皇の装いとは対照的な、純白に水晶をちりばめたシンプルな袍を身にまとう、これまでほとんど公式の場に姿をあらわすことがなかったその女性の名は、月華(げっか)。 その本性は龍でありながら、唯一天界に在ることを許された、最も貴い龍として尊崇される白銀龍の、最後の生きのこりである。
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