13人が本棚に入れています
本棚に追加
すべての物を浄化し癒すという、白銀龍の化身――――伝説にも等しいその麗姿に見惚(みと)れた旺諒が、しばし馬鹿みたいにポカンと口をあけたまま、心のなかでつぶやいた。
(噂には聞いていたが……まさかこれほどの美女だったとは!)
兄である王太子の旺劉(おうりゅう)にむりやり龍界の使者を代わってもらって、この宴に参加した甲斐があったというものだ。
月光を紡いだような長い銀の髪と、芙蓉の花弁のごとくに滑らかな雪肌。長いまつ毛に縁どられた印象的な銀灰色の双眸……。
白銀龍である彼女が人形をとった時の、まさに『月華』の名にふさわしいその容色に、居並ぶ使者たちが息をのむ。
賓客達に向って彼女が微笑をうかべると、周囲のそこここから悩ましげなため息が聞こえてきた。
(あの微笑みの美しさといったら……!)
まるで冴えわたる月光のようだと、使者たちが口々にささやきあう。
玉皇は、挨拶がすむとすぐに緞帳を閉めさせてしまったので、実際に月華の麗姿を目(ま)のあたりにしたのは、ほんのわずかの間だった。
それなのに、彼女の儚(はかな)げな銀細工のごとき顔(かんばせ)を思いだすだけで、なぜだか胸が高鳴り呼吸が苦しくなる。
(せめてもうひと目、あのかたの花顔を近くで見られたら……!)
美男子(ハンサム)で遊び人、そしてちょっぴりおバカでお調子者として知られる白龍の王子様は、早くも重篤(じゅうとく)な恋の病に罹っていた。
最初のコメントを投稿しよう!