天界の宴

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(いない……月華がどこにも姿をあらわさない!) 彼女にひと目惚れしてから、はや数日。 ふたたび月華に会えることだけを楽しみに、毎日宴の間に入り浸っていた旺諒であったが、お目あての佳麗はいつまでたってもやってはこなかった。 逸(はや)る気持ちがとうとう抑えきれなくなり、衝動的に月華の住まいである月麗宮を訪れた彼だったが――――。 白亜の美しい宮殿で、さっそく大きな肩すかしをくらった。 「月華様はただいま、実験棟として使っていらっしゃる離れの亭(あずまや)におられます」 若緑の襦裙(じゅくん)をまとった、楚々とした若い女官が、丁寧にそう彼に告げる。 「離れの? ああ、あの隅にある亭か。では、そちらにうかがうとするよ。ありがとう」 実は訪問の約束をしていない旺諒は、深く追求されないうちにと笑顔でごまかし、そそくさと立ち去ろうとした。 けれども、彼の思惑などバレバレだったのだろうか。 彼女が何やら謎めいた笑みを返すと、一言つけたした。 「どうぞ道に迷われませんよう、お気をつけくださいませ」 (道に迷う、だって? 亭はここから目と鼻の先じゃないか) 悪意はなさそうだが、いったいどういう意味なのだろう。 ほんの少しだけ、いやな予感が胸をよぎる。 それでも心を躍らせながら、スキップしたくなる気持ちをおさえて、まっすぐに亭に歩いて向った旺諒だったが……。
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