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ありがとうございました!」
花が辺りに飾られており、見るからにお花屋さんだというのが判る。
(私はお花屋さんで働いている藤(ふじ) 晴(はる)夏(か)ですっ!)
エプロンを身に着けており、そのエプロンにはブローチを付けている。
(もちろんお花は大好きです!)
花々にジョウロで水をやる。
とても綺麗に咲いている花もあれば、花と一緒にまだ小さな蕾を付けた植木鉢もあった。
確かに、見回したかぎりだと、お花屋さんだと判るが、明らかに違う部分が一つあった。それは――。
そう、人――お客がいない事だ。
「大事に育ててるのに誰も来てくれないよ……」
そんな中、店内に自分以外の足音が聞えてきたのだった。すぐさま、サッ振り向いた。
(えっ?)
晴夏は驚いたのだ。私服ではなく、きちんと着こなされた、見た目からしてとても高そうな燕尾服(えんびふく)ではないかと思えるくらいの服装をしていた。
「藤 晴夏様ですか?」
「え、あっ、はい……えっと、アナタは――?」
綺麗に整った見知らぬ男から自分の名前が出たことに戸惑ってしまった。
「申し遅れました。私(わたくし)は峰川(みねかわ)浬人(りと)と申します」
深々と頭を下げ、丁寧にそう口にした。
「それで……」
「今日からアナタの執事をさせてもらう事になりました」
そう彼はニコッと答えた。
「執事?」
「はいっ!」
彼がまた答えた時も晴夏に向かってニコッと微笑んだ。
「だって執事って普通お金持ちの人や、偉い人達の家とかに居るんじゃないんですか?」
彼にたくさん質問をしてしまったが、浬人は何も言わず、ニコッと答えた。
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