スパイのぼくは異性に弱い

２、危険な潜入

四月初旬、千葉県。

凍えるような青い空、震えるような青い海。きらきらと照る太陽、たなびく白い雲。

銀色のボディがまぶしい「しらうお急行(エクスプレス)』は、鋭く光り広くまっすぐな一本橋を渡り、その先の輝く学園島を目指す。

『次は～、終点。オリオン学園前、オリオン学園前です。
お出口は、右側です。
お忘れ物のないよう、ご注意ください。
本日はしらうお急行のご利用、真にありがとうございました……』

車掌のアナウンスが流れると、周囲の乗客たちがゆっくり下車の準備をはじめる。ぼくも一度伸びをすると、上に載せていた大きなボストンバッグを静かに下ろした。

――千葉の太平洋側につくられた人工島、オリオン学園島。あの悪名高き「教育完全独立法案」が可決されてすぐに、教育連盟が「新しい学校の在り方」として創設に関与し、つい十年前ほどに出来上がった人工島だ。

日本だけでなく世界中のＩＣＴと集合学習を集結させた、まさしく「知の先端」というべき場所である。