298人が本棚に入れています
本棚に追加
裏切り者の後輩と入れ替わって、一人の男子が教室に入って来た。
彼はさっき、一階の踊り場で戦った美少年だ。彼はぼくに近づいてきたので、先にあいさつしておくことにした。
「いや、見事な作戦勝ちだね。それにきみ、結構強かったよ」
「それはどうも。でも最後は、センパイに負けてしまいましたから」
褒めてやったというのに、美少年はちっとも嬉しそうではなかった。結果に納得いっていないという表情だった。
その言動からして、彼はかなりの負けず嫌いと見た。
「訓練に勝ち負けはないよ。
それにきみはスパイ側じゃないか。本来は見つからないで、ことを済ます方がスマートというものだ」
「……」
美少年はその端正な顔に、ますます悔しさをにじませた。肩の震えからして、明らかに何かの怒りを隠しているように見える。
やはり訓練であっても、ぼくが彼に攻撃したことが気に食わなかったのだろうか?
「殴ったり、首をしめたりして悪かった。怒ってるか?」
「子どもじゃあるまい。そんなことじゃ怒りませんよ」
「じゃあ何に怒ってる? 隠してないで、言ってくれ」
ぼくは若干イライラした口調で言った。
「センパイの結果ですよ」
「は? ぼくの負けなんだから、きみたちの勝ちでいいじゃないか。それの何が問題なんだ?」
「あんなカンタンなお色気作戦(ハニー・トラップ)に引っかかるなんて……センパイ、人間として最低ですよ」
美少年はぼくを見下した目で見て言った。
最初のコメントを投稿しよう!