1 学生スパイがいる世界

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とにかくこのインチキ研究が国連などの国際機関で認められてしまったことにより、あっという間に世界中にネバーランド思想が広がった。 我らが日本の場合では、今から二十年前ほどに「教育完全独立法案」といわれる悪名高い法案が可決されたことにはじまる。 この法案を手短にまとめると、次のようになる。 『純粋な子どもたちが学校は、一つの国みたいなもの。 だから学校が何をしていても、国は一切関わらないし何も言わないでよね? あと独自の兵士、独自の警察官、独自の裁判官がいても、子どもだったら問題ないよね』 ということだ。 何このクソ法案、素人でも「悪法」だってわかるぞ……と諸君も思うだろうが、通ってしまったものは仕方ない。 ソクラテス先生のおっしゃった通り、「悪法もまた法なり」ということなのだから。 さてこの法案が通ると、世界中のいたるところで憲法が改正され、学校という名の要塞(ようさい)がたくさんできてしまったわけだ。おかげで学校は完全なブラック・ボックスとなり、国や警察がその内部で何が起きているのか知ることは難しくなった。 もっと簡単に言えば、教育機関が『第四の権力』――つまり立法・行政・司法というあの『三権分立』から、さらに教育が分離し一番上に設定された――ということだ。 保育園から大学までが、その学校独自の思想や慣習を生み出すようになった。 ネバーランド思想が過大に推進された結果、学校は警察まで立ち入り禁止という『聖域』になってしまった。
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