1 学生スパイがいる世界

18/19
前へ
/243ページ
次へ
「ミサイルがあるし、防衛省かなんかの格納庫(かくのうこ)に見えますが?」 『いいや。これはある学校の内部を写した写真だ』 「え?! これが?!」 ぼくは仰天して声をあげてしまった。それから目を大きく見開いて、画像の隅(すみ)から隅まできちんと観察した。 確かに良く見ると、作業をしている人たちはみんな学生のように見える。校章らしきものも、ミサイルのボディーにプリントされている。 『この画像はある学園の秘密回線から、一昨日突然我々宛てに送信してきたものだ。送り主が何者かも特定されていない』 「それで、ぼくの任務は?」 『この画像の真意を突き止めてくれ。このミサイル格納庫は何の目的でつくられ、どこが射程範囲で、その後どうなったか―― ものがものだ。日本政府も気が気でないだろう』 確かにその通りだ。ミサイルなんて、使い方は一つ――どこかの何かを吹き飛ばすため。 だが問題は、どこにそれを打ちこむかである。これがわからない限りは、日本政府も手出しができないわけだ。 それでぼくたちの出番だ。ぼくがこのミサイルの真相を暴き、情報を日本政府に提供するのだ。 場合によっては、生徒や教職員を含めた大捕(と)り物になるには違いない。
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!

298人が本棚に入れています
本棚に追加