298人が本棚に入れています
本棚に追加
かなりデカい仕事――だからこそ、このぼくのスパイ魂が燃え上がるのだ。
『実は先ほどきみが受けた訓練所は、この学園の校舎をモデルにしていたのだ。
そこで一番行動が早かったきみに、今回の依頼を任せようと考えた』
なるほど、そういうことだったか……
ぼくは湧き上がる興奮を抑えるようにしながら、ミスター・ボイスに尋ねた。
「こんなネタをうちに漏(も)らすなんて……この画像の送り主は生きているでしょうか?」
『わからん。だが送り主の回収は第一優先ではない。
きみはここに映されているミサイルを特定することだけに、集中してほしい』
ミスター・ボイスは極めて慎重な声調で言った。
『エージェント・ソウ。ミサイルが学びの場である「高校」にあること自体、異常なことだ。
これが何かを早急に突き止め、場合によっては破壊しなければならない。それが我々「国」の未来を守ることになる……
わかったか?』
「了解!」
『よし、十分に力を振るってくれたまえ。きみのスパイとしての腕を信じている』
ミスター・ボイスの通信が切れると、秘書さんがそっとぼくの前にアタッシュケースを置いた。
ぼくは黙って、目の前に置かれたそれを開ける。そこには几帳面(きちょうめん)に折りたたまれた制服、赤色のネクタイ、そして生徒手帳があった。
「入学おめでとう、エージェント・ソウ。きみは今日から、私立オリオン学園の転校生よ」
ウィンクしながら、秘書さんはぼくの耳元でそう言った。
最初のコメントを投稿しよう!