1 学生スパイがいる世界

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――さてきみたちは、「スパイ」と聞くとどんなキャラクターを思い浮かべるだろうか? 鍛え抜かれた肉体とスマートな頭脳をもつ、イケメン? あらゆる男を虜(とりこ)にする、魅惑の美女? それとも冷酷な思想を秘めた、クールな裏切り者? いや、それだけがスパイではない。スパイの仕事は、決して悪党を殴り倒しビルを爆破するだけではないからだ。 スパイとは本来はもっと、静かなものだ。だからこそ、誰がスパイでもおかしくはない。 でもたとえば、こんな場合はどうだろうか――街中ですれ違うようなごく普通の男子高校生が、スパイとして活躍することは? ない、と賢いきみたちは思うかもしれない。高校生の分際でできることは限られているし、大人と戦えるわけがないし、何より依頼がくるはずないじゃないかと。 確かにそれはつい最近までの世界では正しかったはずだ――今では全然、状況が違うんだけど。 なんてったって学校では、「生徒が教師よりもえらい」時代だからね。 そのことも後できちんと話をしなければ、ならないみたいだ。 そんなことより、おっと――このすばらしき物語の主人公である、ぼくの自己紹介を忘れていたようだ。 ぼくの裏の名(コードネーム)は「ソウ」……何を隠そうぼくこそが、「ごく普通の男子高校生スパイ」なのさ。
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