298人が本棚に入れています
本棚に追加
「侵入者あり! 侵入者あり!」
けたたましいサイレンの音が、残酷にもぼくの妄想を一瞬にして粉砕した。
くそ、スパイ映画と刑事ドラマを足して二で割ったような自己紹介を考えていたのに。これでは妄想がはかどらないではないか。
何たることだ、目の前にはスポットライトの当たる、ぼくだけのステージなどありはしなかった。ただ目の前に見えるのは、意味不明の数列が上から下に流れる、パソコンの画面のみ。
……どうやらぼくは学校がもつ機密情報へのハッキングに成功したらしい。だが同時に、校内セキュリティを発動させてしまったようだ。
「侵入者だ、捕まえろ!」
ガラガラとドアが開いて、真っ暗だった部屋に光が射しこむ。ぼくがコンピュータルームに侵入したことが、早くもバレてしまったようだ。
ぼくは舌打ちして、ブレザー下に隠したシャーペンを数本、芯(しん)を出しながら取り出した。
「食らえ!」
ぼくが投げたシャーペンは、襲いかかろうとした二人の首に突き刺さった。その二人はそれが命中するなり、ぐりんと白目をむき、ばったりとその場に倒れた。
――やはり我がスパイ組織の、シャーペン型麻酔(ますい)針(ばり)の効き目は素晴らしい。今度開発者を褒めてやらなければなるまい。
さてそんなことはどうでもいい。早くこの校舎から逃げなければ、ぼくは捕まってしまう。
最初のコメントを投稿しよう!