1 学生スパイがいる世界

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ぼくが去ろうとした瞬間、突然ものすごい力でぼくは足をつかまれた。 「ここは、通さない!」  美少年は右手でぼくの右足を思い切り引くと、ぼくはバランスを崩し床に叩きつけられる。 なんて怪力だ、その容姿からは想像もできない。 「へへ……そうこなくちゃ、面白くないね」 ぼくが苦笑いしている間に――美少年はぼくの足を持ったまま立ち上がり、勢いよく拳を振り下ろした。 ぼくはとっさに身体を左に回転させ、その強烈な攻撃をよける。 「おりゃ!」  美少年は続けて拳を振るう。何とかガードしたが、鈍痛がぼくの右腕を襲う。 だが今この瞬間、勝機はつかんだ―― 「なっ!?」 ぼくは一瞬のすきをついて、自分の左足を美少年の右腕に蛇のようにからませた。 さらに自分の身体をひねることで美少年を引き倒し、そのまま右腕をとって関節技にもちこむ。 「ぐぐぐ……」 馬乗りになり、ぼくはそのまま美少年の首に自分の左腕を当てる。 美少年の顔がみるみるうちに青ざめていき、暴れる元気がなくなっていく。 美少年は空いた左手でぼくの制服の襟をつかみ、投げ飛ばそうと試みる。 悪くはない、しかし経験不足としか思えない。暴れれば暴れるほど、ぼくの腕はますます彼の首に食い込むのだ。 これはそういう技なのだから。 「う……」 美少年は目を閉じ、がっくりと倒れこんだ。どうやら「落とす」ことに成功したらしい。 ぼくはようやく美少年から離れ、周囲を確認した。 すでに倒した生徒たちが、むっくりと起き上がっているのがわかった。
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