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ぼくは奥の教室に入ると、窓ガラスを破る心の準備をした。
「あ」
そこには下着姿の女子――もといぼくの仲間がいた。
なぜこんな状況で下着姿? と考えるかどうかといううちに、自然と視線が彼女の肉体に吸い寄せられる。
ふむふむ、任務前には気づかなかったが、なかなかいいスタイルをしている。それにかわいい……チャーミングなおさげだ。
「センパイ……」
「な、何をしてるんだね? は、早く逃げるよ?」
その女の子は顔を真っ赤にしながら、ぼくを見て言った。
「こんな時じゃないと言えないんです。だから……聞いてください」
「あ、うん……後にしてくれないかな? 今、状況が状況だし――」
ぼくが早口でそう言うと、女の子はがっしりぼくの腕をつかんだ。発育途中の胸がぼくの腕に押し当てられ、ぼくは思わず奇声をあげた。
「お願い、話を聞いて」
女の子に上目づかいでそう言われると、無視するわけにはもういかない。ぼくは緊張して、顔が赤くなるのを感じた。
「センパイって、いつもクールで、その、わたし……」
女の子はもじもじしながら、ゆったりとした口調で言った。
「あの、センパイのこと……ずっと好きでした。こんな時に言うのもあれですが……」
女の子は、ぺこりとお辞儀した。
「付き合ってください! お願いします!」
ふむ、こういう状況だとはいえ――本物のスパイなら、短く華麗(かれい)に返答せねばならんな。ぼくは小さく微笑み、そして言った。
「わかった……それじゃ、一緒に行こうか?」
ぼくは静かにうなずき、手を差し伸べた。女の子もにっこり笑い、ぼくの手をつかんだ。
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