1 学生スパイがいる世界

8/19
前へ
/243ページ
次へ
「センパイ……また引っかかりましたね?」 「は?」 ぼくが間抜けな声を出した瞬間であった――ガチャリガチャリと、無情な金属音がした。 慌てて目をやる――ぼくの両手に、太い手錠がつけられたのだ。 「あ、あばばばばば……」 そんなことをしているうちに、四方から敵が群がってきたのだ。 「しまった! 貴様、裏切り者か!」 「気づくのが遅かったみたいですね、センパイ。 はじめからわたしとセンパイは、仲間なんかじゃありませんよ」 ぼくのスパイ仲間は制服を着ながら、背中越しに言った。 「くそー! 純粋そうな顔してからに、騙された! おのれ下品な女め、それも悪くないんだが今回は――」 ぼくが考えつくありとあらゆる悪態をついているうちに、数十人の男女に囲まれてしまった。 「もうおしまいだぞ。観念しろ」 「く……く……」
/243ページ

最初のコメントを投稿しよう!

298人が本棚に入れています
本棚に追加