1 学生スパイがいる世界

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ぼくは屈辱でうつむいたまま、何とか声をしぼり出した。 「訓練、終了」 ぼくの一声で、その場にいた数十人の生徒が一斉にばらけた。 「ふぅー、何とか防衛できたね。やっとスパイチームに『一勝』したよ」 「センパイが『女に弱くなかったら』、絶対データ盗まれてたよ。 ほかのセンパイたち、あっという間にデータ盗んでいっちゃうんだもん」 「よし、これで掃除せずに済むわ。 いっつも『センパイたちが早く帰っちゃう』から、うらやましかったのよね」 口々にぼくの後輩はそんなことを言って、学園を模したトレーニングセンターを去っていく。 「ああくそ、また失敗した……」 元仲間の後輩に手錠を外してもらいながら、ぼくは直にあぐらをかいた。 「じゃあセンパイ、あとよろしくッス」 「はいはい、お前らがつくったバリケードは撤去しておくから帰れっての」 「じゃあ、お先に失礼しまーす」 明らかに上機嫌な女子は、鼻歌まじりに女子仲間と一緒に昇降口から出ていった。 「あ、そうだ一つ言っておきますけど」 女の子がこちらを向いて、小悪魔らしくウィンクした。 「わたしセンパイのこと、なんとも思ってないんで。勘違いしないでほしいッス」 ぼくは歯ぎしりしながら、彼女たちを見送った。
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