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ぼくは屈辱でうつむいたまま、何とか声をしぼり出した。
「訓練、終了」
ぼくの一声で、その場にいた数十人の生徒が一斉にばらけた。
「ふぅー、何とか防衛できたね。やっとスパイチームに『一勝』したよ」
「センパイが『女に弱くなかったら』、絶対データ盗まれてたよ。
ほかのセンパイたち、あっという間にデータ盗んでいっちゃうんだもん」
「よし、これで掃除せずに済むわ。
いっつも『センパイたちが早く帰っちゃう』から、うらやましかったのよね」
口々にぼくの後輩はそんなことを言って、学園を模したトレーニングセンターを去っていく。
「ああくそ、また失敗した……」
元仲間の後輩に手錠を外してもらいながら、ぼくは直にあぐらをかいた。
「じゃあセンパイ、あとよろしくッス」
「はいはい、お前らがつくったバリケードは撤去しておくから帰れっての」
「じゃあ、お先に失礼しまーす」
明らかに上機嫌な女子は、鼻歌まじりに女子仲間と一緒に昇降口から出ていった。
「あ、そうだ一つ言っておきますけど」
女の子がこちらを向いて、小悪魔らしくウィンクした。
「わたしセンパイのこと、なんとも思ってないんで。勘違いしないでほしいッス」
ぼくは歯ぎしりしながら、彼女たちを見送った。
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