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お稲荷娘
神社の前の階段に腰を下ろし、アイスを食べる。
「外道……ってまたあんたか」
後ろから声がかかる。そこには白い狐のお面を付けた少女がいた。
「よう。一昨日はすまなかったな。お前の分だ」
袋に入ったアイスを渡す。
「なんや、その袋は?お前の食べてるそれとは違うやないか?」
「……ったく。しょうがないな」
私はその少女に袋から出したアイスを差し出す。彼女の小さな舌が伸びる。
「雪様のように冷たいや。しかもお酢じゃねぇや」
「そうか。不味いか。せっかく買ってやったのに」
わざと落ち込んだフリをする。そして黙々と食われた。
「小童、美味や。だが、賽銭にお金を入れておけ。そしたらここで食ったことは見逃してやろう」
「それはありがたい」
お賽銭に金を入れる。
「よし、商売繁盛じゃ」
一昨日にも言われた言葉が返ってきた。
「またおいでや」
「あぁ」
夕日に向かって帰るのだった。
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