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ふと我に返ると身体中から汗が吹き出るほどの猛烈な暑さを感じた。真上にらんらんと輝く太陽と背中に引っつくような砂は、もちろんその要因に当てはまるだろうが決定的な原因ではなかった。
僕の目の前には吸い込まれそうなほどに澄んだ彼女の瞳があった。僕の両手は彼女の華奢な両の手に塞がれており、僕の身体は彼女の火照った身体に押さえつけられていた。ーーようは彼女の身体が僕の上に乗っていた。それも密着して。
「ご、ごごごごごめんなさい!」
慌てて手を振りほどき、身体をくねらせるようにしてその場から脱出した。
どうした? 何が起こった?
体についた砂を急いで払って立ち上がる。白シャツに黒のデニムにサンダル。とにかく服はきっちりと着ているようだ。
僕の慌て具合と裏腹に彼女は落ち着いてゆっくりと立ち上がり、ていねいに服についた砂を払っていた。白シャツに黒のデニムにサンダル。同じ出で立ちだった。
「あ、あの、とにかくすみません」
他に言うべきことも浮かばず出てきた謝罪の言葉に彼女はにっこりと微笑んで首を横に振った。
「大丈夫ですよ。それよりーー」
彼女の体が再び目と鼻の先まで近づく。とくんと心臓が跳ねるのがわかった。彼女は少し背伸びをして僕の髪の毛に手を触れた。
「ここにも砂、ついてますよ」
「あっ、ありがとう」
緊張のあまり声が上ずってしまった。そんな僕をからかうように彼女は笑った。
「あはは、かわいいですね。そんなに緊張しないでくださいよ。初めて会ったわけじゃないですし」
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