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「気がついたか?」
扉を開けて入ってきたのは大柄の男性で、私が見えるようにか、寝ている自分の目の前まで来てくれた。その姿はまるでおおきな熊のようで、優しそうなたれ目が印象的だった。
「あ、はい。あの、ここは…」
「よかった、気がついて。腹が減ってるだろ。とりあえずなにか口にするか?話しは食べながらゆっくりしよう。」
ここはどこかと聞こうとすると、大きな男性は朗らかな笑みを浮かべ、大きな手で自分のお腹をさすりながら提案してきた。
言われてみればたしかに、すごくお腹がすいていた。それに気がつくとどうしようもなく、喉も乾いてきて、とりあえずなにかを口にしたくなった。
「すみません。お願いします。お水ももらっていいですか?」
「ああ、もちろん。今持ってくるよ。」
そう言うと、男はすぐにまた奥の部屋へ戻っていった。
(…なんだかいい人そうだな。)
知らない部屋に熊のようなおじさん。なんだか変な童話のなかにいるようで、もしかしたらこれは夢なのかもしれないと思えた。
喉が乾いたと考えるとよけいに乾くので、熊さんが飲み物を持ってきてくれるまで寝ていることにした。
今まで十分に寝たはずなのに、目を瞑るとなぜかすぐにウトウトと意識が遠退き始めた。
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