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わけもわからず街を出て、先を行く熊さんに置いていかれないように着いていく。 さっきまでの喧騒は嘘のようにしんと静まり返った山道に入りしばらく歩くと、熊さんはくるりと辺りを見渡した。 「………よし。人もいなくなったな。」 「さっきからずっといなくなかった?」 山道に入ってからはどう考えても私たちしかいなかったので、さっきからなぜなかなか話し出さなかったのか不思議に思っていた。 「さっきまでは同じ道を帰るためか人が後ろの方に3人いたんだよ。」 「え、気づかなかった。」 「こればかりは経験の差だな。」 驚く私に彼は「ははっ」と得意気に笑った。 「……で、私が疲れにくい理由は?」 すこし腹が立ったので、その話題は置いておいて早速本題に移ることにした。 「あーそれはな、アヤが迷い子だからだ。」 「え?それって、私の特殊能力は"疲れにくい"ってこと?!」 私は熊さんにベットの上で聞いた『迷い子』の話を思い出し、肩を落とした。 (確かに疲れにくくなりたいとは常日頃思っていたことだけど…。口には出しさえしなかったけど、特殊能力はどんなのだろうとかなり期待していたのにこれはないでしょ!) わかりやすく落ち込んだ私に若干焦りつつ、熊さんは「いやいや」と手を横に降った。 「いや、確かに"疲れにくい"ことも特殊能力の一つだと思うが、まだ他にもあるんだ。」 「えっ!?」 まだ希望が?!と私は勢いよく顔をあげて必死の思いで熊さんを見上げた。 「まずは、その能力は"疲れにくい"というよりも"癒す"といった方がいい。」 「癒す…?」 "癒す"と言われて、まず私の頭のなかにはマイナスイオンや子犬など定番の癒しが浮かび上がってきた。 「そう。傷を"癒す"。疲れを"癒す"。病気を"癒す"。心を"癒す"。さっきアヤの手を握ったことで確信したが、どうやらその"癒す"効果は対象の人に直接触れることで起こるらしい。」 「なるほど。あ、だからさっき手を握ったの?」 「そうだ。一日中歩き回ってたから少し足が疲れてな。でもアヤの手を握ったらその疲れがすっと引いたんだ。しかもこれから50km歩いてもいいってぐらい元気が出てきた。」 「私はやだよ?!」 「ははっ冗談だよ。」
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