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――おかえり、『生前の世界』へ。
色の無い空間の中、俄に不快感を覚える程の軽快な口調でそう告げたのは、趣味の悪い黒衣を纏う見知らぬ男だ。
見知らぬ男、と断じてはみたものの、頭からすっぽりと被った大きなフードによって、その顔の殆どが覆われてしまっている為、口許の辺りしか確認する事ができず、本当に『見知らぬ男』であるのかを判断する事は現状では難しい。
加えてもう一つ、訂正しておくとするならば、その黒衣の男は何も告げていない。その口を、微塵も動かしてはいない。
併し、彼の言葉は、確かに僕の脳内に響き渡っていた。まるで、僕自身が頭の中でそう呟いたかの様に……。
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