審査

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 料理人は運んできた荷物を準備台の上に置き、厨房を見回した。  五台並んだコンロ、下準備された食材が並んだ調理スペース、食器や食材の並んだ棚に大型の冷蔵庫と冷凍庫。全てが一年前と変わってないように見えた。と言うより、子供の頃の見慣れた光景がほとんどそのまま残っていた。  彼は並んだ食材をひとつひとつ調べていった。今日の料理の材料として使えるものかどうか。厨房にあるものは何でも使ってよいと言われていた。ただし冷凍庫だけは開けてはならないとも。理由は教えてもらえなかったが、冷凍の食材を使うつもりはなかったので別に支障はなかった。  厨房の食材はどれも良質で新鮮なものだった。彼はしばらく思案し、麺とスープ、そしていくつかの食材以外は厨房のものを使うことを決めた。  料理人は荷物を解いて、スープの入ったペットボトルと新聞紙に積んだ野菜、そして保冷ケースを取り出した。コンロの前に立ち、一番と二番のコンロに寸胴鍋をかける。一番のコンロの寸胴には水をはり、二番のコンロの寸胴にはペットボトルのスープを注いで火をつけた。  調理の下準備にかかる。まず野菜からだ。持参した包丁で野菜を刻んでいく。白菜や椎茸はそぎ切り、人参、筍は一口大の薄切りにした。莢豌豆は持参したものを使う。筋を取って両端を切り落とした。  次に荷物から半球状の塊がたくさん入ったビニル袋を取り出した。彼が今回の切り札として用意した材料だ。半量をまな板の上に出し、庖丁で荒みじんにする。残りはフードプロセッサーで切り刻み、さらにすり鉢ですりつぶしてペースト状にした。
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