おかえりなさいが言いたくて

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「そう、わかった。いつもありがとうね。今度またお礼をさせてね。はーい」 私は言って、通話を終えた。ふぅ、と小さく息を吐き出す。六畳一間の狭苦しいアパートの一室。ぼろぼろの畳の上で、私は静かにその時を待つ。あ。階段を上ってくる足音がやたら大きく響く。やがて足音は廊下を通過し、この部屋の前で止まった。がちゃがちゃという鍵を開ける音がして、今度はすぐにドアが開く音が響いた。 「また来てるし」 呆れたような声。私の靴を見つけたらしかった。 「おかえり」 部屋に現れた大男――身長がなんと190センチもある、純粋な日本人なのに!――に声をかけた。大男は返事をせず、私の隣に勢いよく腰を下ろした。 「一階の人に迷惑だよ雪男(ゆきお)」 「一階の人だっていつもうるさいからお互い様だ。で、おまえはここで何をしているんだ。また合い鍵を持ち出したのか」 「持ち出したなんて人聞きの悪いこと言わないで。おばさんが快く貸してくれたのよ。心美ちゃんぜひあいつの様子を見てきて!ってね」 「あのばばあ」 「自分の母親をばばあ呼ばわりしていいのは高校生までよ」 雪男は私の指摘に、あっそう、と気のない返事をして。 「異性の幼馴染の部屋に勝手にあがりこんでいいのは小学生までだぞ」 そう、やり返した。
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