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「前もそうだった。おまえも覚えているだろ?あの日もおまえ家に来てたじゃん」
「あー、そうだっけ」
「そう。おまえなんか俺のデートの日にいるよな……わざとか?知ってるのか、本当は」
「あんたのデートの日なんか興味ないんですが」
ひやっとしたのを隠すために、私は強い口調で言った。雪男は冗談だよ、と真顔でつぶやく。
「とにかく、前のデートもそうだった。やっとホテルに行けそうだったのに、物陰から女が飛び出してきて、俺の名前をしつこく呼んできてにやにやするから、逃げ出してしまった……」
「そのときも女の子置き去りにしてたんだよね」
「ああ。後悔して帰ってすぐ電話したけど、着信拒否だよ……」
そりゃそうだ。普通に幻滅する。そういうとき頼りになりそうな見た目なのに全然頼りにならないばかりか逃げだすんだから。幻滅するわ。
「大学入ってから、こんなことばかりだ。デートしていたらどこからか女が現れて、全部台無しにするんだ……」
「あっはっは、残念だねえ!」
私はもう耐えきれなくて、思いっきり笑う。雪男はむっとしたらしく、笑い転げる私をじっと見つめていたが、やがてため息をついて、少し笑った。
「でもまあ、毎度毎度、失意の中帰宅したらおまえがおかえりって言ってくれて、だいぶほっとするよ。偶然なのはわかってるけど、それでも助かってる」
「な、なに急に!」
「いや、本心だよ」
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