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やがてするりと床へ落ちた、折り紙の手裏剣。
「何が起きたんです? 若旦那、何をやらかしました?」
「いえ、私は何も……ただ折って作っただけで」
健斗が問題の折り紙を拾い上げて、眺めたりひっくり返したり、曲げたりねじったりして感触を確かめる。白露は壁の跡をしげしげと見やっていた。
「ごく普通の折り紙ですねえ。何か特殊な投げ方をしました?」
「そんな知識も技術もありませんよ」
「啓明すげえ!! どうやったら刺さるんだ!? 俺もやってみたい!!」
問いとともに手裏剣が飛んできたが、人間や壁やカーテンに当たってぽとぽととと床へ落ちる。
「いや、折り紙は壁に刺さったりしませんから」
「じゃあ、これは何で刺さったんだよー」
一体何が起きたのか。啓明にすらわからないのだから、ほかの誰かにわかるわけがない。
「若旦那。ものはためしで。もう一回作って、投げてくれません?」
健斗に促されて、啓明はもうひとつ手裏剣をこしらえた。
「……念のため、道場へ行きましょう」
これ以上部屋を傷めるわけにはいかない。健斗や白露に有無を言わせず、啓明は折った手裏剣を持ってさっさと部屋から出た。
道場の壁はかつて白露が破壊して以来、かなり頑丈に修復されている。それでも壁に向かって投げるのは気が引けた。
「啓明、早く早く!」
白露が目を輝かせてせかす。
「でも……」
「これだったらよくないですか? 本物の忍者っぽくていいでしょ」
健斗が古くなって廃棄する予定の畳を軽々と持ってきた。
「あ。はい。それなら安心できます」
畳を壁へ立てかけてもらい、五メートルほど離れ、軽く振りかぶって啓明は投げた。
……ズバン。
またも、有り得ない音が響いた。
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