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「今の人間てさ、だいたいが過去の遺物から拝借して生活してんの。泥棒みたいなモンになっちまうんだろうけど」
生きるため仕方ないことだろう。責められることでは無いし、ゲインも納得しているはずなのに、横目で捉えたゲインは仏頂面だった。どこかで引け目を感じているのかもしれない。
「一応さ、もし遺体が在ったら埋葬もしてるんだぜ? 砂ばっかりになっちまってるけど」
地面は高温で焼かれ乾くため、殆どが砂に覆われていたが、弔うために遺体は砂に埋めるのだと言う。昔と異なり、今の人間は材質が違うせいか、焼くよりスタンダードになったそうだ。ゲインの話を、私は涙の止まらない中聴いていた。
「……んでさ、」
一拍置いて、ゲインが言った。
「この廃墟さ、セキュリティが頑丈な部屋が一つだけ在るってんで有名だった訳。
“開かずの部屋”ってさ」
「開かずの……」
「そ。セキュリティの堅固さが尋常じゃないって。で、腕試しで俺も来た訳」
「……」
「準備滅茶苦茶してさー来たんだけど、セキュリティ突破しても、何か重しされててさ。抉じ開けたら、すっげー機械でバリケードされてたの。ここいらに在る機械と同型だから同じヤツかな。何に使われてたか知らないけど」
こんこん、と、横に在る機材をゲインはノックした。ここに在る機械、と言うことは、私のために増設された機械の一部だろう。私が体を移したから用済みになったのをバリケード代わりに活用したのかもしれない。……マスター。
それじゃ、自殺じゃないですか。
どうして治療してくれなかったんですか。
どうして生きていてくれなかったんですか。
私、やっとマスターの話聞いたら返せるんですよ?
『会話』が出来るんですよ?
「おかえり」だけじゃなくて。
もっともっといっぱい、話したかったです。
落ち込む私を余所に、ゲインは話し続けていた。
「けど、アリッド見付けてわかったよ。
アイツは、アリッドを守っていたんだな」
自分が死んだらどうなるか、わからないから。私は背後のゲインを見た。
ゲインは黒い煤を、マスターだったものを真っ直ぐ見詰めていた。
「駄目だって悟ったから、セキュリティを強固にして、バリケード作って、守ってたんだろうなぁ」
私が休止状態になったあと、マスターが死んだあと、世界は混乱した。暴動も起きた。略奪も、傷害も、殺人も。
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