Night.1 水の都

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世界が水に沈んで100年と少し。 徐々に徐々にという感じで、それでもまだ地上に出ている部分もある。 でも、道を歩くには決まった時間でないと不便で仕方ない。 わたしは記者見習い。今日も先輩といろんな世界を渡る。 水没してない世界は、写真でしか知らないけれど、なんだか暑そうだった。今も暑いけど。 「次いくぞー!」 水中を移動する大きな生物を写真に収め、先輩の声に腰をあげる。あの生物、なんだったんだろ。セイウチかな。 先輩が船頭さんと話しているのをボイスレコーダー片手にメモする。現地の人たちに聞く話は重要で、ためになる。 「ずっと昔から水の都だった、あれ、なんでしたっけ」 「イタリアにあるベネツィアですか?」 「そうそうそれ。そこなんかは今どうなってるんですかねぇ」 「今は水没して大きな水中都市になってますけど」 「あぁ、やっぱりそうなの」 「気になります?」 「そりゃ気になりますよ。そう遠くない未来の姿でしょう?現地の方はどうしてるのかなぁ、とか」 「水の上に船浮かべて住んでたり、遠くに行ったりですね。まあ、遠くに行ってもみんな似たようなものですけど」 「そうねんですねぇ。いやね、最近じゃここら辺も船で生活する人が増えてね」 そんな話が延々と続く。仕方ないよ、地球温暖化なんだから。北極も南極も氷が溶けちゃったんだから。次は海が干上がるとか言ってるけど。わたし達が生きてるうちは水に悩まされるのよ。水に住居追われてね。 メモをひたすらとりながら心でそうつぶやく。大体どこも一緒なのにこんな記事良く需要があるな、と思いながら。 近くで波紋が広がった。そちらに目をやると、巨大な女性の顔がプカプカ浮いていた。よく見るとその足先には足ではなく尾ひれが、、、。 「先輩、先輩あれ!」 メモを取るのを忘れて先輩を促す。あれは噂の人魚では!?という興奮が先輩にも伝わったようで。 「船頭さん!あれはなんですか?!」 という声が聞こえた。そこまで綺麗な女性ではないが、人外にはひどく興味をそそられる。 船頭さんが朗らかにその女性に声をかける。 「エミリア、今日も大収穫したのかい。尾が浮かんでいるよ」 話しかけられた推定人魚のエミリアはこちらを見ると、すくっと立った。立つとまた上背がすごい。2、30mはありそうだ。、、、ん?立った??
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