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夏も終盤。いったい何をしていたんだろかと神撫悠介は考える。最初は何かが起きると期待してたのに。特別な何かはついになかった。
アイスを持って来たのに、待ち人はまだ現れない。
「おっ良い物あるね。貰っていい?」
背後から狐の面を飾った女子が、神撫の隣に座る。
神撫が無言で手渡すと、彼女は雫を落とさないよう手首を捻りつつ冷気を堪能していた。
神撫はそれを見ながら呟く。
「夏に遅刻するやつどう思う?」
彼女は答える。
「逆に、ちゃんと時間守るやつは暇人」
「アイス返せ」
「貢ぎ物は返せない」
彼女は胸を張る。
「ところで、お前」
「神撫くーん」
視線の先に待ち合わせ人の愛子が走ってきた。
「ごめん待った?」
「いや、話し相手が」
愛子は不思議な顔をする。
神撫が振り返るとそこには誰もいなかった。ただ、神社の奥に祀られている狐が嗤ってる気がした。
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