24人が本棚に入れています
本棚に追加
「はっ」
嘲笑が零れる。
重くなった瞼を下ろし、深く長く、溜息のような息を吐き出した。
私のことなんてたいして知らないくせに。
貴方は。
……目を開ける。すっと身を起こして、手にしていた眼鏡を掛けた。指紋で曇っている。構わない。ベッドを下り、ソファの上のジャケットとネクタイを拾い上げる。ジャケットは軽くはたいてハンガーに掛け、壁面に五連並んだハンガーフックの、一番右に吊る。ネクタイは、一番左のフックに吊ってあるネクタイ掛けへ。
深呼吸をした。そして心に決める。
やめた。それがいい。やっぱり駄目だ、あんなのは。
道を踏み外してはいけない。
朝起きたらぜんぶ、無かったことに。
最初のコメントを投稿しよう!