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――晩御飯のあと、映画の上映時刻を調べていると家の電話が鳴る音が聞こえてきた。
降り続ける雨の音にかき消されかすかにしか俺の部屋には届かない。
誰かが出たらしくすぐにそのベル音は止んだ。
それから少しすると部屋を誰かがノックした。
「幹也、マコちゃんと帰り一緒だった?」
すぐにドアを開けられ、ノックの意味もなく入ってきたのは子機を手に持った母さんだった。
「先帰ってきたけど」
どうかしたのか尋ねると、まだ帰ってきてないんだって。と心配そうな声色で告げると通話を再開させながら部屋を出て行った。
……まさか。
そんな訳はないと思いながらも嫌な予感がする。
「とりあえず車でこの辺りを見回ってみるって」
今帰ってくる所かもしれないし、と通話を終えた母さんからそう聞いて、切ったばかりの電話を受け取り着信履歴からマコの家にかけ直した。
「もしもしおばさん?」
すぐに出たおばさんは俺の声を聞いてホッとしたような声を出した。
「ミキちゃん、マコがどこか寄るって言ってた?」
友達と何か食べて帰るとか。そんな寄り道をしていたらこの時間になるのも無理はない。
そのまま話し込みでもしたらバスがなくなって、そろそろ迎えに来てと電話をかけてくるのかもしれない。たまにある事だ。
そういえば○○に行きたいって言ってた。とか言えればよかったのに。
それならば俺だって、こんなに不安な気持ちを抱えることもない。
「それは解らないけど、その辺に居なかったら学校の自転車置き場見に行った方がいいかもと思って……」
言外に、マコが帰りも無理やり自転車に乗った可能性を匂わせる。
まさかそこまで馬鹿な事をしていないと信じたいけれど。
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