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「でさ、中に入れてくれない?寒いしお腹すいたし今何時?」
さっき見た大体の時間を告げるとマコは驚いたようにもうそんな時間?と呟いた。
数時間どころかその数十倍以上の時間が経っているのだと、告げたらどうするだろう。やっぱり驚くだろうか。
こんな会話をしているとコイツには俺をどっかへ連れて行こうなんて気はさらさらないように思える。
ドアを開けてもきっとただ普通に入ってくる。
折角だから風呂に入らせよう。そしたら蒸し暑い風呂場で夏だと思い出して、もう寒くないかもしれない。
雨に濡れた髪も乾かせばいつも通りになる。
「お母さん心配してるかなーあ、駅辺りまで探しに行ってる?ひょっとして」
だからいないの?と近い答えを出す。
「まあそんな感じ」
本当に、何で来たのだろうかと改めて考えてみる。
「そっかー。じゃあ電話してみよ……っと、全部鞄の中だよ。電話も貸して?」
おばさんに連絡とって、戻ってきたら軽く謝って、そんで早く寝たいと言った。
…………なんだ、ただ本当に帰りたがってるだけじゃないか。
別に俺に会いに来たわけじゃない。自分ちに帰れないからだ。
それならとりあえず第2の自宅みたいな家に来てもおかしくはない。
「じゃあなんか俺に、言うこと無いの?」
「え、傘無くしてごめんね?」
「それはもう聞いたし気にすんな」
そう返すと少し考えてから口を開いた。
「んー、ただいま?」
どうして開けちゃいけないのかなんて、誰も教えてくれなかったのだから知らない。
だったら俺は早くマコに楽になって欲しいと思う。
あったかくして、何か美味しいもの食べさせて、一緒におばさん達が帰ってくるのを待とう。
そしたら好きなだけ寝ていいから。
「おかえり」
言いながら俺は引き戸に手をかけた。
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