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昼間に学校のプールに泳ぎに行ったり外を駆け回って遊んだ俺たちは、夜になると当然ぐっすり眠った。
誰かに呼ばれても気が付かないから、そもそもドアの人影になんて遭遇しない。
特別に、と部屋はクーラーをつけたままで窓は開けていない。
和室に敷いた大きな布団に2人並んで寝転んで、ちょっと話をしていたと思ったらいつの間にか眠りに落ちている。
夜になっても鳴いているセミの声も気にならないぐらいだから外からの物音にも気が付かないだろう。
また明日遊ぶために体力を回復する。
起きたらまた騒ぎ出す。
よくよく考えたらいつもと変わらない、ただ2人で俺の家に帰るだけの違いの日を三日続けた夜だった。
「……ミキちゃん、起きて?」
クーラーのモーター音にギリギリかき消されない程度の小さな声。
「マコ?どうした?」
トイレにでもついてきてほしいんだろうか。と寝ぼけた頭で考えたことは、次の言葉で裏切られる。
「外、誰かいるみたい」
指さしたのは窓ではなく、廊下へ出る襖だ。
耳を澄ませてみても、廊下からは人の気配が無い。
家族の誰かが様子を見に来たのかと思ったけれど、足音も話し声もない。
少しだけ開けてみても廊下で点いている小さな灯が線になって入ってくるだけだ。
気のせいだろ。
寝なおそうと言う前に開いた隙間にマコが手を入れて出入りできるだけの幅にした。
寝そべったままの体制で体を半分外に出し、そこで動きが止まった。
「マコ……?」
不審に思った俺は、マコの上から覆うように身を乗り出し、同じように上半身を廊下に出した。
「……ねえ、誰か、来たよ」
震えた声でマコが言った。
おびえたような、それでいて何かを期待しているかのような目で俺を見てから這うように廊下へ出た。
「おい、待て!」
廊下から見える玄関の引き戸には、すりガラス越しに誰かの影が浮かび上がっていた。
俺もマコを追いかけ、玄関へと近づいた。
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