ガラスの向こうに立つ影は、

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少しすると俺たちが起きだした気配に気が付いたのか、父さんと母さんが寝室から出てきた。 「どうしたの、何かあった?」 誰かが来ていたと言うと母さんがマコの家に電話をかけた。 10回呼び出し音が鳴っても、受話器が取られない。 ……数分おいてかけ直しても相手は出ない。 ――小一時間経った頃、ようやく出たのはマコのおじいちゃんだった。 もう寝なさいと言われても、マコんちが気になって眠れない。 2人でやっと繋がった向こうの様子に耳を澄ませると、誰かがすすり泣く声とそれを宥める声が聞こえた。 誰かが来たけれど、こっちは大丈夫ですと母さんが言って、それからマコに代わる。 マコは少しの会話をして切ってから、丸聞こえだった内容を俺たちに伝えた。 「明日迎えに来るって」 「うん、そっか」 電話の向こうの様子から、きっとおじさんは自分の家にも行ったんだ。 でも誰もドアを開けなかった。 ……たぶん、もう大丈夫になったんだ。終わったんだ。 マコが家に帰るのはそういうことなんだろう。 次の日の昼過ぎに、おばさんたちがマコを迎えに来た。 それからまた何事もなかったように普通の日々が続いた。 もしかするとあれは夢だったのかもしれない。 マコが預けられたのは、子供には内緒で話し合わなきゃならない何かがあったのかもしれない。 遺産の事で遠い親戚がやってきてもめていたとか。見せたくないから隠されて、それで俺たちが変な妄想をしただとか。 もしかするとおじさんにそっくりな親戚がいて、その人が騙そうとしたのかもしれない。 そんな風にいくつかの真相を考え出し、いつからかやっぱりあんな事はなかったのだと納得させて頭の片隅に追いやった。 マコともあの夜の話をする事はなかった。 思い出させて悲しい思いをさせたくはなかったし、やっぱり開ければよかったと後悔をさせたくもなかった。 それに、本当に俺だけが見ていた夢なのかもしれないし。 それからも俺とマコは当たり前のようにずっと一緒で、つつがなく小学校を卒業して中学へ上がり高校へ入学した。 微妙な田舎であるこの町で暮らしていればそれらに選択肢はほぼ無いから同じ学校なのは当然だけれど。
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