ガラスの向こうに立つ影は、

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その日は昼過ぎから雨が降ると天気予報で言っていた。 だから俺は自転車ではなくバスに乗って登校することにしたが、マコを迎えに行くと、寝坊したらしく先に行っててと言われた。 通勤通学時間を逃すと、バスは1時間に1本あるかないかになってしまう。 まあ最終的にマコはおじいちゃんに車で送ってもらうという手があるから、多分そうするんだろうなと思いながらバス停へ向かった。 HRが終わってもマコは登校してこず、1本遅いバスに乗ろうとして失敗したかな、なんて思っていると、1時間目の途中でようやく教室へ入ってきた。 「……っ、すみません、寝坊しました」 ガラッと大きい音を立ててドアを開けるものだから、教室中の視線はマコに注がれている。 まだ肌寒い春先にも関わらず、マコは汗だくだ。校門から走ってきたから、という程度のものではない。 「なんでそんな汗かいてんの?」 「チャリで来たから。早くない?」 得意げに返すマコに俺はあきれてわざとらしくため息をついた。こいつ天気確認してないな。 すでに空は厚い雲に覆われて、いつ降り出してもおかしくない。 今日は学校に置いて帰るとして、今週はずっと雨だから乗って帰れるのは来週になるだろう。 逆に来週前半は晴れの予報だから、月曜に今日と同じに寝坊したらどうするんだろう、こいつ。 試しに休み時間に尋ねてみると、じゃあ今日乗って帰ろっかな。と返ってきた。昼から雨だって教えたのに。馬鹿かよ。
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