ガラスの向こうに立つ影は、

9/15
前へ
/15ページ
次へ
予報通りに昼休みの途中から、空は真っ黒な雲に覆われてザーザーと途切れなく雨を降らせている。 これだけのドシャ降りなら、いくらなんでも自転車に乗って帰る訳がないだろう。 放課後になり、雨足は少し弱まっているがまだ降り続いている。 俺は今朝持ってきたのとは別の、ロッカーに入れていた置き傘をマコに貸して、少し空模様のマシな間に先に帰ることにした。 マコは今週掃除当番だから、きっと同じ班の誰かと帰るだろう。 下手をするとただでさえ遅れがちなバスが雨のせいでさらにずれるから、もしかすると待っている間に一緒になるかもしれない。 そう思いながら友達と喋ってバスを待っていたが、前のバスが大幅に遅れたらしく今来た。 乗る予定だったバスがほどよく遅れてマコの帰りに合うように願いながら乗り込む。 窓ガラスを伝う雨のしずくは次から次へと流れて行ってキリが無い。 水を吸い込んだ土は空の暗さも相まって黒く色を変え、途中で見えた川はいつもより水嵩を増していた。 今週末は出かけるのが億劫になるな、とマコと行く約束をしている映画を思い出す。 やっぱりバスは遅れが出るだろうから時間に余裕をもって行かなきゃいけない。後で時間を確認しておこう。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加