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Cクラスを出て隣にあるDクラスへ赴けば、こちらでも同じように組み立て作業が行われていた。 そこで、目立つ金色を見付ける。 作業に打ち込む真剣な横顔、額には薄っすら汗を滲ませている。どこに居たって目立つ金色に、小さく笑みを漏らした。 視界に飛び込んできた隆太に、俺は少しくらいなら話しかけても大丈夫かなと一歩近付いてみる。 そして声をかけようとした瞬間、俺の声は女子生徒の大きな声に遮られてしまった。 「りゅうーー」 「あ、佐々木君丁度良かった!ここなんだけど……」 女子生徒の声がしたその瞬間、俺は動きを止める。 隆太も俺には気付いていないのか、話しかけてきた女子生徒の方へ振り向き、質問に答えて何やら指示を出していた。 余程信頼されているのか、女子生徒は隆太の言葉に何度も頷く。 最後の質問の後、女子生徒が隆太に向けて嬉しそうに笑顔を見せて……次の瞬間、隆太が同じように笑顔を返した。 「鍵本君、どうしたの?」 そんな心配そうな声が、俺の隣から聞こえた気がする。その声の主である同じクラスの実行委員の女子生徒は、きっと俺の表情を見て不思議に思ったんだろう。 顔が強張ってるのが、自分でもわかる。 この感情は、倉持の時とは比べものにならない。それ程目の前の光景は、俺にとって衝撃だった。 隆太が、笑顔を向けてるなんて。 初めて見た。 隆太が、女子に笑いかけてる所。 同じクラスだった時でさえ、見たことなかったのに。 どうしよう。なんだか、胸が苦しくて仕方ない。 隆太が笑いかけていたのは、俺の知らない女子生徒。多分、去年も同じクラスじゃなかった筈だ。 誰だろう。Cクラスの子、かな。 隆太は滅多に笑わない。男友達にだって、そうなのに。 じゃあもしかして、笑顔を見せたあの子は隆太の特別なのか。 笑顔を見せる程、親しいのか。 もしかして、隆太は。
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