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「待たせたな」 「いや、そんなに待ってないよ」 それから10分と経たずに隆太は俺の教室にやって来た。 既にAクラスの生徒は俺だけになっていて、他のクラスメイト達は帰った後だ。 俺の席まで近付いてきた隆太にお疲れ様と声をかけて、帰る前にちょっとしたお願い事をする。 「ごめん。帰る前に借りてた小説返したいんだけど、付き合ってくれないかな」 「ああ。いいよ」 本を返したいと言って先生に伝え借りてきた鍵で第二図書室の鍵を開ける。あまり来れてなかったから、少しだけ埃っぽい。 俺は真っ先にカウンターに入ると、持ってきた本の貸し出しカードに判を押す。 隆太も俺に続いて室内に入って来て、いつもの席に座り俺が本を返し終わるのを待ってくれていた。 推理小説の棚は、入り口に入って直ぐの所。棚に本を返しながら、俺はぼそりと呟いた。 「……隆太って、好きな人、居るのか」 なんとなく聞きたいような、聞きたくないような。そんな曖昧な感情を抱きつつ、口からは勝手に言葉が溢れ出す。 本を持つ手は少しだけ震えていて、自分から質問したくせに、何故か隆太の顔が見れない。 俺はこれを聞いて、何がしたいんだろう。
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