158人が本棚に入れています
本棚に追加
放課後、俺はまたカウンター内の定位置に座って本を読み始める。
残り数ページしか残っていなかった小説を読み終えた俺は、時計を見て思った。
……意外と、時間経ってる。
余程集中していたのか、既にここに来て30分以上が経過していた。
俺は本の一番最後のページに入っている貸し出しカードを袋から引き出して、返却の判を押す。
本を元の位置に戻そうかと席を立とうとした丁度その時、図書室のドアは開かれた。
ドアの向こう側には、昼休みに約束をした佐々木の姿。
佐々木はスタスタとカウンターの前まで歩いて来ると、何故か視線を合わせないままカウンターに二枚の貸し出しカードを置いた。
「……持って来たぞ」
よかった。中々来ないからカードの件を無視して帰ったんじゃないかと考えてた所だった。
意外と律儀だな、なんて思いつつ俺は佐々木にバレないように何度か頷いた。
「遅かったな」
「うちの担任はホームルームが長げえんだよ」
ぶっきらぼうにそれだけを言った佐々木は、判の押されたカードを本の中に挟んでその本を近くの机の上に置いた。
そしてふらりと姿を消したかと思えば、一冊の本を手に先程本を置いた机の前に立ち、椅子に座る。
佐々木が本を読むイメージが中々掴めず、俺は横目にその姿を伺う。
何とも奇妙な光景だ。
ここから見えるのは、佐々木の後ろ姿。
猫背だな……なんて思いながら、俺も読んでいた本を返す為に席を立った。
最初のコメントを投稿しよう!