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そのまま眠ってしまったのか、隆太の呼吸は少しずつ規則正しいものへと変わっていく。俺はそれを見て、急激に恥ずかしさを募らせた。 慌てて近くにあったティッシュを掴み、隆太の口元と枕を拭く。 俺、今、何してた。 我を忘れて、隆太から与えられる快楽に溺れていた事を思い出す。 それと同時に俺は顔を真っ赤にして、隆太の部屋を勢いよく飛び出した。 「はっ……はあ、……っ……」 逃げ込んだトイレのドアに凭れかかり、ズルズルと滑り落ちていく。唇を噛み締めて、必死に気持ちを鎮めようとした。 なんで、なんで俺、こんなになってんだ。 自分の身体が信じられなくて、頭を抱えた。最初はただ触れるだけのキス、だった筈なのに。 知らなかった。人の舌があんな風に動くなんて。 あんなに、気持ち良いだなんて。 鳴り止まない心臓の音と、下がらない体温。未だあの舌を求める身体。 「なんで……っ……隆太に、こんなっ」 この感覚は、この感情は一体なんなんだ。 あそこで隆太が寝なかったら、俺はどうしてた。どう、なってた。 わかんない。自分の事が、全然わかんない。 ただただ危険だと頭の中で警鐘が鳴り響く。 こういう時って、逃げ出す以外にどうすればいい。 逃げ出して来たのにまだ逃げ出したいって思うのは、なんでなんだ。
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