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挨拶を交わしても話をしても、隆太はいつも通りだった。
隆太は昨日の事を憶えてないみたいだ。正直、ホッとした。
「マジか、悪りいっ。直ぐに朝飯食うか?」
「あー、大丈夫。隆太はまだ寝てていいよ」
隆太は俺の説明に慌てて布団から起き上がる。
朝ご飯を用意するからと言う隆太に、俺は携帯電話の待受画面を見せて今の時刻を知らせた。
「あれ……まだ7時なのか。もうちょっと寝れんじゃん」
「うん。俺、目が冴えちゃって寝れそうにないから、時間になったら起こすよ」
「いや、太一が起きてんなら起きる。朝飯作るから、ちょっと待ってろよ」
そう言って立ち上がった隆太が、にいっと口角を上げて笑顔を見せる。
ドクンッ……
「…………っ……あ、りがとう」
笑顔を向けられた瞬間、心臓が一度、大きく脈を打った。
俺も隆太に笑顔を返せば、隆太の笑みはより一層深まった。
その笑顔は、今まで見たどの笑顔よりも眩しく、どこまでも輝いていた。
これは俺に、俺だけに向けられた笑顔だ。
それが堪らなく嬉しい、だなんて。
俺、どうしたんだ。おかしいだろ、そんな風に思うなんて。
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