6

23/34
前へ
/188ページ
次へ
挨拶を交わしても話をしても、隆太はいつも通りだった。 隆太は昨日の事を憶えてないみたいだ。正直、ホッとした。 「マジか、悪りいっ。直ぐに朝飯食うか?」 「あー、大丈夫。隆太はまだ寝てていいよ」 隆太は俺の説明に慌てて布団から起き上がる。 朝ご飯を用意するからと言う隆太に、俺は携帯電話の待受画面を見せて今の時刻を知らせた。 「あれ……まだ7時なのか。もうちょっと寝れんじゃん」 「うん。俺、目が冴えちゃって寝れそうにないから、時間になったら起こすよ」 「いや、太一が起きてんなら起きる。朝飯作るから、ちょっと待ってろよ」 そう言って立ち上がった隆太が、にいっと口角を上げて笑顔を見せる。 ドクンッ…… 「…………っ……あ、りがとう」 笑顔を向けられた瞬間、心臓が一度、大きく脈を打った。 俺も隆太に笑顔を返せば、隆太の笑みはより一層深まった。 その笑顔は、今まで見たどの笑顔よりも眩しく、どこまでも輝いていた。 これは俺に、俺だけに向けられた笑顔だ。 それが堪らなく嬉しい、だなんて。 俺、どうしたんだ。おかしいだろ、そんな風に思うなんて。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

158人が本棚に入れています
本棚に追加