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着ていたTシャツを脱ぎ捨てる隆太。 新しいシャツに着替えてそのまま行くのかと思ったら、不意に俺の方へ手を伸ばしてきて。 その手は俺の前髪を掻き分けて露わになったおでこに小さなキスを落とす。 隆太はそのまま部屋を後にした。 一人になった部屋で、俺はおでこを両手で押さえながら、顔を茹で蛸みたいに真っ赤に染め上げる。 「……っ、何、すんだっ……」 誰も居ないドアの向こう側に向かって言葉を放つ。その声は、驚く程震えていた。 隆太は昨日の事を何も知らない。だからって、これは流石に困る。 そんな、簡単に、触れてこないでくれ。 昨日の感触もまだ、消えてないのに。 まるで攻撃力の高い技を食らったみたいだ。 昨日と同様か、或いはそれ以上の熱が俺の身体に宿る。 心臓が、鷲掴みされたみたいに苦しくなって、今にも張り裂けそう。 このキスは、どこまでも、俺の心に暴力的だ。 ああ、もう……目眩が、する。
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