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俺は自分がした行動の意味を自覚した瞬間、カアァッ、と音を立てて顔を真っ赤に染め上げた。 いや、ちょっと待って。俺、本当に!? 羞恥心の波が、一気に襲い来る。 嘘だと思いたかった。でも確かに、唇には、何かが触れたような感覚が残ってる。 俺は恥ずかしくて恥ずかしくて、腕で必死に顔を隠した。でも、それももう、この顔を見られた後では遅かった。 「それ、やめろよ。見てるこっちが、すっげえしたくなる」 テーブルの反対側の隆太が、徐に腰を上げた。俺の顎に、熱い手が添えられて。 何が起こってるのか理解する前に、隆太の顔が近付いてきた。 「んっ……!」 与えられた感触に、ぶるりと身体が震える。 一度唇が離れて、眼鏡を外されて、また唇を塞がれて。 この状況を理解すると同時に、頭の中はプチパニックを起こしてた。 どうしよう。どうしよう。 今にも、触れた部分から色んな感情が漏れ出しそうだ。 キスされて戸惑う気持ちと、あのキスを思い出して揺れる心。キスされて嬉しいと思ったこの感情も全部。 その感触は、俺の脳みそを蕩けさせるには充分な効果を発揮する。 体温調節すらもままならない。心臓に耳でも付いてんのかってくらい、心臓の音が煩い。 隆太のキスが、恐ろしく怖いと思った。こんな、思考の全てを持っていかれるなんて。こんな、身体を支える力を奪われるなんて。 それすらも、嬉しい、だなんて。
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