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隆太の瞳に映ってるのは、他の誰でもない俺だ。 俺はそれが嬉しくて、目を閉じる事が出来ない。そのままでいたら、隆太から目を閉じろとばかりに手で視界を覆われた。 一瞬で真っ暗になった視界。でも、隆太の手から伝わる熱が心地よくて、ドキドキして、脈拍と体温が更に上がった。 このまま、独占してたい。そう、思った。 ふわふわとする頭の片隅で、隆太が前に、俺にしかキスしないって言ってたのを思い出す。 その言葉は、まだ有効だろう。 けれど、今はそうでも、これからはわからない。恋人が出来れば、それは呆気なく崩れてしまう。 俺はこれからも、隆太だけでいいのに。 不意に頭を過るのは、俺だけに向けられた、眩いまでの笑顔。 この唇に触れるのは、俺だけであって欲しい。 誰にも触れて欲しくない。俺だけのものにしたい。隆太の隣を、誰にだって渡したくない。 こんな風に思う俺の、隆太に対する感情は、他の友人に対するそれとは決定的に違っていた。 隆太だけに、真っ直ぐに向けられるそれの名前を、俺はこの時初めて知る。 これは、この感情は、友情なんかじゃない。 俺の中に初めて芽生えた、恋愛感情だ。
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