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「太一」 「な、に」 「ちょっと待っててくれ」 「っ、うん」 と言いつつ、隆太は動かない。むしろ、抱き締める手に更に力が込められた気がする。 俺は何を、待ってればいいんだ。 それともこれは、まだ離さないって言われてるんだろうか。 ああ、もう、どっちだっていい。 どうしよう、俺、隆太の事が好きだ。 心よりも身体が叫んでる。全身で、俺に知らせてくる。 大きく鳴り響く心臓の音が、何度も訴えてくるんだ。 隆太が、好きだって。 初めて恋をした。 この感覚は絶対にそうだ。 今まで経験した事がないからこそわかる。 こんなにも胸が高鳴るのに こんなにも呼吸がままならないのに こんなにも好きな気持ちでいっぱいなのに これを恋だって言わなかったら、多分俺は、一生恋を知らないままだ。
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