7

5/21
前へ
/188ページ
次へ
隆太への恋心を自覚するのに、抵抗はなかった。 隆太へ抱く感情が友情じゃなく恋愛感情だと思った瞬間、むしろしっくりきたというか、すとん、とつっかえてた何かが取れたような気がした。 俺は男で、隆太も男。 でも好きになってはいけない人を好きになったとかそんな風に思う事も、男を好きになった現実を信じたくないと足掻く事もなかった。 俺の中には、男を好きになった、という感覚はあまりなくて。 ただ、俺は、隆太の事が好きなんだなって実感しただけ。 まあ、強いて言うなら、究極的に恥ずかしいって事くらいで。 俺、一体いつから隆太が好きだったんだろう。 一度自覚してしまえば、自分が無意識にやっていた行動も全て意味を成してくる。 いつからかははっきりしないけど、俺は多分、結構前から隆太の事が好きだったんだと思う。 あの女子生徒に対する感情も、恋心からくる嫉妬心だったんだと、今なら理解出来る。 自分の居場所を取られるのが嫌だと思うのと同時に、隆太に触れて欲しくないと思っていたから。 だからこそ、昼にもらった倉持の返答は、俺にとってとても都合の良く出来ていた。 そっか。笑顔を向けるのは、あの子だけじゃなかったんだ、って。 今隆太の一番近くに居るのは、俺なんじゃないかという錯覚に見舞われた。 だって、隆太が、キスをするのは俺だけだなんて言うから。 特別扱いされてんのかなって思ってしまう。勘違いじゃなければいいと、願ってしまう。 俺はこれから先、隆太からのキスに、恋愛感情を胸に抱き応えるだろう。恋愛感情を持って、隆太にキスをするだろう。 そうする事を、自分でも止められそうにない。そんな自分が、少しだけ怖くもあった。 ああ、恋とはなんて、狂暴な感情なんだ。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

158人が本棚に入れています
本棚に追加