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室内に入った隆太が、カバンの中からタオルを取り出して滴る汗を拭う。 タオルを頭から被ってる隆太の後ろ姿に、このまま背中にくっ付いてしまいたい衝動に駆られた。 隆太が、目の前に居る。それだけで、俺の心は気が気じゃない。 触れたい。近付きたい。このちょっとの距離だって、もどかしい。 タオルから顔を出した隆太が、こちらを振り返る。その瞬間、互いの視線が噛み合った。 隆太の目が、少しだけ見開かれる。でも直ぐに細められて、それは優しい眼差しに変わった。 俺、この目に弱い、かも……なんて。 不意に隆太が、たった一歩で俺との距離を詰めてきた。 このままキスされるんだろうなって思ったこれは、俺の経験則か。 隆太の熱を直ぐそこに感じる。緊張でもしてるのか、俺の身体はほんの少し力んでいて。 眼鏡を外さなきゃ、そう思ったと同時に、唇に微かな感触を受ける。 「……ん、」 触れた部分は、ほんの僅か。 これは、優しくて、意地悪なキス。 俺を翻弄する、魔性のキス。 唇が触れ合ったその瞬間から、意識全部が、そのキスに持っていかれた。
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